タミフルなど抗インフルエンザウイルス薬―使用上の注意の改訂について感じたこと

 

2018年8月21日付で、タミフルをはじめ、抗インフルエンザウイルス薬の「使用上の注意」が改定されました。
以下が、タミフル(オセルタミビル)の改定内容です。

 

【医薬品名】オセルタミビルリン酸塩
【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。
[警告]の項の
   「10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の
     服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。こ
     のため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断
     される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
     また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な
     対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれ
     があること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等
     は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に
     対し説明を行うこと。
     なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があ
     るので、上記と同様の説明を行うこと。」
を削除し、[重要な基本的注意]の項に
   「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフ
     ルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。
     異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応とし
     て、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、
     少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講
     じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。
     なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以
     降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現す
     ることが多いこと、が知られている。」
を追記し、[副作用]の「重大な副作用」の項の精神・神経症状に関する記載を
   「精神・神経症状、異常行動:
     精神・神経症状(意識障害、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、症状に応じて適切な処置を行うこと。因果関係は不明であるものの、
     インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。」
と改める。

 

オルタミビル以外の抗インフルエンザウイルス薬についても、同様の改定が行われています。
結局のところ、インフルエンザの薬が異常行動の原因だとは言えません、という事です。
子供がインフルエンザになったら、薬を飲んでも飲まなくても異常行動が出る可能性があるので気を付けましょう。

抗インフルエンザ薬と異常行動の因果関係は認められなかった


2018年5月、厚生労働省有識者会議は抗インフルエンザ薬と異常行動の因果関係は認められなかった、との結論に至りました。
それを受けて、今回の改定となりました。

現場の薬剤師としての感想は、やっぱりな、という感じです。

インフルエンザウイルスの注意すべき点として、インフルエンザ脳症というものがあります。
インフルエンザが脳に影響することはよく知られています。
異常行動=インフエンザ脳症というわけではありませんが、インフルエンザで高熱が出た場合に異常行動がみられることも知られています。
そして、当初から、薬との因果関係は不明と伝えられていました。

ですから、異常行動についての報道が過熱した時、タミフルが直接の原因でもあるかのように報道されていたことには疑問を感じていました。
多くの医療関係者がそう感じていたのではないでしょうか。
異常行動にばかりスポットが当てられ、薬を服用し早期回復を図ることの重要性が伝えられていませんでした。
ニュース報道は、物事の一つの面が強調されて伝えられることがしばしばあります。
報道関係者には、物事を様々な面から見ていただき、公正な立場で情報を伝えていただきたいものです。

インフルエンザでの発熱時には注意

今回の改定内容には、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、と明記されました。
インフルエンザによる発熱時には、薬を服用していなくても見守りなどの対策を講じることが必要です。
一般の方には、引き続き注意が必要であること、抗インフルエンザ薬をむやみに怖がる必要はないことを理解していただきたいと思います。